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オピニオン データが示す真実

イタリア人の『紳士性』は本当に女性を幸せにしているのか

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まずはじめに、以下のnoteを読んでほしい。

男性よ、紳士であれ|Massi @massi3112|note(ノート)

 

これは、イタリア出身で日本の金沢にすんでいるマッシさんという方が書いたnoteだ。

おおくの賛同が寄せられている。

 

しかし、僕は彼の意見に、モヤモヤとした感情があった。

別に、日本の男を否定されて口惜しいとか、そんな表面的・感情的なものではない。

ただ、もっと根本的な、「それは正しくない」という思いが脳内に浮かび上がったんだ。

 

これを書くにあたって、おそらく多くの批判をいただくだろう。

しかし、あらかじめ言い訳をさせていただく。

 

僕は別に、現代の日本人男性がマッシさんより紳士だと言っているわけではない。日本人男性に媚びるつもりはないし、むしろ根本的に変えていかなければいけないと思っている。

逆に、イタリア人男性の性格や文化・歴史を否定する気もさらさらない。イタリアの文化は素晴らしいものがあるし尊敬するイタリア人もいる。

しかし、それでもなお、マッシさんの「イタリア人は紳士」という言葉にはいささか違和感を覚えた。

今回は、それに関して僕の思うところを、データを使いながら書き連ねていく。

 

女性の容姿をほめるのは注意が必要

まず、マッシさんのミスドで女性の容姿をほめたことに関して言いたい。

働いている最中の女性を可愛いとか美しいとかほめるのは、国際的にもタブーとなりつつある。

 

日本では稲田朋美元防衛大臣が、アメリカではオバマ米大統領が非難されたことだけれど、政治やビジネスの場で容姿や年齢に言及することは今やタブーとなりつつある。

オバマ大統領夫妻が共に失言、セクハラ批判などで謝罪や釈明

稲田朋美防衛相「私たちは容姿が美しい」スピーチは笑えない

 

稲田元大臣はともかくとして、オバマ大統領の「素晴らしく美人」発言は、紳士的な意図があったのではないかと思う。

しかし、そういう『紳士的対応』でさえも、時に批判の対象になる。

 

というのも、それは仕事と関係ないところの評価だからだ。

 

例えば、笑顔で対応してくれて「笑顔が素敵だ」というのはいいことだろう。

しかし、女性の中には、その仕事内容に触れずただ『可愛い』といわれることを不快に思うことがある。

 

僕の彼女がそうだし、あるいは弁護士の山口真由氏さんもその一人だ。

山口氏は、何倍も勉強ができる(東大首席卒業・ハーバード大院卒)自分に対して「可愛い」といってくる男に、「私はこんなに勉強ができるのに、なんで下に見られなきゃいけないんだ」と思ったそうだ。

僕の彼女も、かなり仕事ができる人なんだけれど、ある国の会社の男性に「あなたのようなcuteな人が来てくれてうれしい」といわれたのを遠因として取引を断ったことがある。

 

上で挙げた例は、マッシさんのミスドの件とは異なるかもしれない。

マッシさんの経験は、客と店員というシチュエーションだった。

少なくとも、相手の女性が喜んでくれているのならそれに難癖をつけるのもまた違うだろう。

 

しかし、それでも言わせてほしい。

同じほめるにしても、「おいしいドーナツを期待しているよ」など、仕事に関係するほめ方をした方がベターだったのではないかと。

 

仕事中はその内容をほめる。能力に自信がある人は、女性であれ男性であれ、容姿ではなくてその能力をほめる。

その方が、より多くの人を喜ばせる、本当の意味で『紳士的行動』なのではないかと思うよ。

 

イタリア人の紳士さは女性の役に立っているのか

 

上だけの例を見ると、ごくわずかな例をだして反論しているように思うかもしれない。

そこで、以下、データ的なことで、『イタリアは紳士』が本当かどうか検証していく。

 

結論から言うと、イタリアは紳士とは言えない。僕はそう考えている。

というのも、イタリアの職場には女性が少ないんだ。そして、同じ職場における賃金格差が激しいプロフェッショナル、あるいは管理職の女性も多いとは言えない

 

ジェンダーギャップ指数という指標がある。

この数値が高くランキングが上位にあるほど、女性が健康で積極的に経済や政治で活躍していることを表す。

もちろんこの指標を鵜呑みにすることはできない。

 

たとえば、ルアンダやナミビアといった途上国が上位にランクインされているのは、戦争で男性が少ないなどの事情が関係している。

あるいは、考慮されるべき分野が考慮されていないなどの指摘もある。

 

とはいえ、先進国同士で、各分野ごとを比較するのであれば大きな支障はないだろう。

このジェンダーギャップ指数を経済分野に限って見たところ、イタリアは決して紳士の国だとは思えないんだ

 

まず、賃金格差。とりわけ、同じ職業についたときの賃金格差を見ていこう。

この分野において、日本は45位。全体で見てこの国が110位だということを考慮すると、比較的良い数字だといえる。

一方のイタリア。126位。これはイギリスの64位やドイツの33位と比べても低い。

(なおフランスは133位でイタリアよりも低い)

 

また、女性の仕事参加率も見ていこう。

これは、労働者における女性の割合が高いほど上位に来る。

この指標で、日本は79位。高いとは言えない。

しかしイタリアは93位。イタリアは男女ともに就職率が低いけれども、それを考慮しても、働けない女性が多い。

 

一方、日本が男女平等に関して指摘される二点についても考慮していく。

女性でプロフェッショナルな職業についている割合、そして、管理職以上の割合だ。

この2つの指標で、日本はそれぞれ108位129位

日本でも優秀な女性はたくさんいるのに、昇進したり、あるいは研究所のようなところに就いたりすることがかなり難しい国だということがわかる。

 

では、イタリアはどうか。

それぞれ、ともに92位

日本が言える立場ではないだろうけれど、イタリアが際立って女性の経済参加に関して優れているとは判断しかねるよ。

 

 

国民性がイタリアのランクを下げているわけでもない

 

とはいえ、経済参加率だけでその国が紳士かどうかを判断するのは乱暴だ。

というのも、主婦になりたい人が多ければ、彼女らの思いを尊重すればするほど男女平等の度合いは低くなるからだ。

つまり、イタリア人女性に働く意欲が少なければ評価が低くて当然だ。

 

ただ、イタリア人女性が主婦志望だったり、仕事したがらないかというと、そういうわけではないようだ。

 

主婦希望率に関して、学力測定でおなじみのPISAが国際的なデータを取っている。

PISAは学力テストを課すだけでなく、さまざまなアンケートもとっている。

その中で、30歳ごろあなたはどういう職についていたいかという質問があった。

 

その中で、「主婦」と答えた割合は、日本人女性の中で4%

一見低いようだが、この数値は調査した国の中で2番目に高い数字だ

 

それと比べると、ヨーロッパの先進国は主婦希望率が低い。

ドイツ1.08%,イギリス0.55%,イタリア0.5%

 

つまり、イタリア人女性が率先して、仕事より家庭を選ぶ民族というわけではない。

データえっせいより。

 

また、イタリア人女性の能力が男性より低いというわけでも決してない。

たとえば、イタリア人女性の高等教育進学率は男性よりも高い。

 

イタリアにおけるtertiary education(大学などの高等教育)の進学率は、女性が72.4%,男性が54.1%

女性の方が20ポイントも高い。

これは他の先進国でも見られることで、女性が優秀なこと、そして、男性の中で「学問よりも早く手に職をつけるべき」という考えが残っていることなどがあげられる(アメリカなどにはこの考えが存在している)

 

一方の日本。 tertiary education進学率は、女性62.0%、男性65.1% 

3%ほど男性の方が多い。

 

つまり、イタリアには優れた技能を持った女性が多い。

 

優秀な女性が多く、かつ彼女らの多くが主婦を望んでいるわけではないにもかかわらず、イタリアの職場では、日本以上に女性労働者が少ない。さらに、男性と同じ仕事をしても給料が低い。

 

この状況を見て、僕はイタリアを紳士の国だとはとらえることができない。

少なくとも日本語の『紳士』という言葉には、『女性の望むことをさせない』という意味はない。

 

もちろん、環境が異なるというのが一番の理由だろう。日本にはEUのような仕組みはないから、日本人が外国で仕事をしようとするのはイタリア人がそうする以上のハードルがある。優秀な人はフランスやドイツに行くのかもしれない。あるいは難民問題が関係しているのかもしれない。

日本人女性が低賃金で働いているというのも関係しているだろう。派遣会社などがあることで、女性の労総者に占める割合がかさ増しされている可能性だってある。

しかし、それでも、イタリアで働く女性がめちゃくちゃ少ないという事実に変わりはない。イタリア人女性が男性と同じ仕事をしても賃金がもらえないという事実も変わらない。

 

何度もいっておくけれど、イタリアの惨状をつたえることで日本が素晴らしい国だと主張しているわけではない。

 日本は女性にとってかなり酷い国だ。

ただそんな『酷い国』日本よりも、『紳士の国』イタリアの方が働く女性が少ない。

主婦になりたい女子が8倍多い日本よりも、イタリアの方が少ない。

イタリアは知識技能を持った女性が男性より多いのに、その逆の日本よりも女性労働者の割合が少ない。

 

正直、僕の調べた限りでは、イタリアが現地女性にとって心地よい国だとは思えないのが現実だ。

 

 イタリアの紳士さ、日本のおもてなし

 

マッシさんは、「イタリアといえば紳士」だという。

また、イタリアを訪れた女性も、イタリア人男性の紳士的対応に惚れた人がいる。

 

しかし、データから見ると、どうもイタリアが女性にとって暮らしやすい国かというと、そういうわけではなさそうだ。

となると、イタリアは、長期的に女性を幸せにするという意味の『紳士』ではない。

 

自国のイメージが統計的データと異なるケースはどの国でもあり得る。イタリアに限ったことではない。

その最たるものが、『おもてなしの国、日本』だろう。

 

日本はおもてなしの国と言われる。おもてなしをアピールしたことがオリンピック開催に繋がった。

あるいは、『日本人は優しい』というのもよく聞く話だ。

 

しかし、そういった印象は、いくつかのデータによって否定されている。

日本の評価の低さでちょっとした話題となったのは、世界寄付指数だろう。

このランキングで、『人助け』の項目で、日本は144位中142位という惨憺たる結果だった。

 

僕は、この指数のシステム的な問題点に気付いているので、実際の日本人が世界で最も不親切な人だとは思っていない。

しかし、日本人が世界でとびぬけて親切・おもてなしの国かというと、そういうわけでもないのではないかな。

(僕自身は、この指標がそのまま国民の優しさを表すとは思ってない。こういうアンケート調査では、謙虚で自分に厳しい一部アジア地域は評価が低く出てしまう。詳しくはこちらをご覧ください。)

 

この世界寄付指数の問題は別としても、 日本人がおもてなしの国民だなんてのは、まやかしであり幻想だろう。

僕は、マッシさんのいうイタリアの紳士性も、それに近いものなのではないかと思っている。

 

つまり、イタリア人の言う『紳士』というのは、ちょっとズレている。

一時的に女性に幸福感を与えるのかもしれないけれど、長期的に見ると女性が幸せな社会とはいいがたい。

(同じことは、同じく(イタリア以上に?)紳士の国と呼ばれるイギリスに関しても言える。賃金格差や女性労働参加率はドイツやアメリカの方がよい数値だ)

 

マッシさんは、僕がイタリア人の女性労働者の少なさを指摘したら、イタリアは職場では紳士さが消えてしまうと返信してくれた。

 

僕は、そうは思わない。

紳士さが消えるのではなくて、『紳士』とされる対応そのものに何かおかしいところがあるんじゃないかと考えている。

紳士さを当たり前にしているのであれば、職場で紳士さが消えてしまうというのは考えにくい。

環境が変わったら消えてしまうようなものは『当たり前』とは言えない。

だから、紳士な状態でなお、女性労働者が少ないのではないかと考えている。

 

再三再四いうけれど、日本人男性がとんでもなく素晴らしいなんてことは毛頭思っていない。

日本人男性に変わってほしいという点では、ぼくはマッシさんと共通している。

日本人女性はもっと社会で活躍できるし、そのサポートを僕たちがしなければいけない。

 

日本人男性が素晴らしいと言っているわけでは決してない。

イタリア人男性のおおらかさ、素直さは、多くの日本人男性が失っているものだと思う。

しかし、それでも言わせてほしい。

 

男性は、女性の幸せにつながらないのであれば『紳士的な行為』をする必要はない。

逆に、女性の幸せにつながるのなら、僕は野蛮だと思われてもいい。

 

女性の幸福につながる形でやった行動が結果的に紳士とみなされるのなら問題ないのだけれど、最初から紳士を心がけるのは違うと思う。紳士的な行動というのは、『自分が丁寧だと思う』行動であって、『相手が丁寧だと思う』行動とは必ずしも一致しないのだから。

イタリア人男性も日本人男性も、『女性の利益になる形で』『女性が幸せになる形で』行動し対応していくべきだし、自分自身もそうやっていきたい。

 

また、この記事が、一部の排外的な日本人に悪用されないことを心から強く願い、擱筆させていただきます。

 

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