はいどうも、カワウソだよ。
『中国嫁日記』で有名な井上純一さんが、なんと経済の本を出した。
それが、『キミのお金はどこに消えるのか』
題名のきっかけは、井上さんの奥さんの月(ユエ)さんの一言だそう。
井上純一さんは、中国の工場に送金するときに、円安のせいで高くついたことがあった。
そのさい、月さんはこういったそう。
円安になるとワタシたちお金減りますよね
減た分のワタシたちお金、誰が取りマシたか? (原文ママ、井上純一・キミのお金はどこに消えるのか)
僕たちは中学の社会で、円安とか円高とかを勉強した。
しかし、一通り経済を勉強した 人の中でもこの「円安で減った金はどこへ行くのか」という質問にさっと答えられる人は少ないのではないだろうか。
あるいは、なぜ円安とか円高の状態は存在するのだろうか。
普段ニュースで当たり前だと思っているようなことを、多くの人は十分に理解していないようだ。
今回は、そんな『キミのお金はどこに消えるのか』の一部内容を紹介していくよ。
日本は破綻する論の嘘
マイナス金利は信頼の証拠
よく言われる主張として、日本ヤバイ論というのがある。
『日本政府の借金がGDPより大きいからギリシャみたいになる』だというやつだ。
しかし、井上純一氏はその論に反論する。
そのキーポイントが、国債の長期利回り、そして物価だ。
国債は、ただ返すだけではなく、多くの場合金利が付加されて返ってくる。
そうでないと、だれも買わないからね。
しかし日本政府は利回りが低い。10年利回りだと0.15%(アメリカは3.24%)で、一部の利回りはマイナスだ。
投資目的ならば、日本よりもアメリカの国債を買った方がよっぽぢましだ。
しかし、ではなぜそんなに低いのか。
答えは、日本がそれだけ信頼されているということだ。
信頼の低い、途上国と呼ばれる国ほど、国債の利回りは高い。
崩壊する可能性が高い国が金を得るには、高い利回り率を設定する必要があるからね。
逆に言えば、これほど日本の国債利回りが低いのは、日本崩壊の危険が非常に低いと思われていることの証拠。
また、物価も日本円の信頼の証拠だという。
物価が安いというのは、円が高いということだ。
円の高低は、信頼の証拠。だから円高になりやすい。
だから、日本円は信頼されている。
というのが、キミのお金はどこに消えるのか 第1話の概略だよ。
消費税増税はなんの意味があるのか
2019年10月より消費税が10%にあがった。
安倍総理は増税に反対の方針らしいけれど、財務省は猛プッシュしているというのが実情のようだ。
では果たして、増税によって、国はお金を回収できているのか。
感覚的には、回収できているはずだと思うよね。
そうでなければ、なんのための増税だということになる。
では、結果を見ていこう。
ガベージニュースによると、消費税が導入された1989年度、一般会計税収(税金による政府の収入)は54.9兆円。
2017年度は57.7兆円。
なんと、消費税導入・増税したところで国の税収はほとんど変わっていない。
2009年度なんて38.7兆円だったから、消費財があるにも関わらず、税収が減っているときもあったというわけだ。
もちろん、消費税による収入自体は増税とともに増えている。
消費税導入時にあ3.3.兆円だったのが、2017年度には17.1兆円となっている。
逆に言えば、消費税以外の税金。法人材などが減少しているということだね。
つまり、消費税増税→お金が国に吸われて消費低迷→モノが売れず給料減額→国がもらえる法人税額が減り、たいして儲からなくなる
という原理だね。
ちなみに、この税収についてのデータを作成したのは財務省だ。
……なんで増税を推しているんだろうか。
本当にわかりかねるよ。
なぜ中国経済は成功したか
借金というと、悪いイメージがある。
しかし、返す意思のある借金は、むしろ経済にとってありがたいことらしい。
『キミのお金はどこに消えるのか』 では、以下のような例がのっている。
① Aさんが銀行に100万円預金する
② Bさんが銀行から70万円借りる
銀行がBさんに渡したお金はAさんのお金から来ている。
しかし、銀行が生み出したお金だけに注目すると、100万円だったものが170万円になっている。
不思議だけれど、この70万円はどうやって生み出されたかというと、Bさんが70万円借金したからだね。
漫画にはここまでしか書いていないけれど、ソフトバンクのように、何兆円も借金することで、その何倍ものお金を生み出す企業や個人も出てくるよね。
もしソフトバンクが一円も借金しなかったら、今でも無名企業だったかもしれない。
そういうことを考えると、借金は必ずしも悪いことではないということだね。
で、その原理を活かして成功したのが中国。
中国では、若い人にカードを作らせて、いわば借金を促している。
それにより、中国国内でのお金の流通が増え、輸出入ではなく内需だけでやっていけるようになったんだ。
モノづくり大国ニッポンといわれるけれど、景気回復のためには、返す意思のある借金は必要ということだね。
マルクス資本論は何がまずかったか
資本論の言う『剰余労働』がありすぎた
中国といえば、共産主義のイメージを持っている日本人は多い。
たしかにその通りなんだけれど、どうも中国人にはそういう感覚があまりないらしい。
中国人の月さんも、「中国と共産主義は関係ないし、学校でもほとんど教えてない」といっている(キミのお金はどこに消えるのか より)
それはともかく、マルクスの『資本論』がソ連や中国を作ったことは間違いないだろう。
しかし現在、共産主義の、いわゆる社会主義国と呼ばれる国も、市場主義経済を一部取り入れている(北朝鮮を除く)。
一時期は世界有数のソ連を築き上げたこの考え方、どこが変だったのか、この点についても井上純一氏は書いている。
まず一つが、剰余労働について。
剰余労働とは、「給料以上の仕事をしている」ということだ。(残業のことではない)
例えば、4人の店員が時給1,000円で5時間働くとする。
それで、お店が30,000円儲けたとする。
給料として店員に払われるお金は4×1,000 ×5で20,000円だね。
ではの残りの10,000円はどこに行ったのか
それは、店長だったり、オーナーだったりの給料になるよね。
この1万円が、余剰労働だ。
逆に、もしこの余剰労働がゼロであれば、会社は儲けがゼロ。
倒産してしまうね。
だから、資本主義においてはこの『余剰労働』が必要。
しかし、このせいで、労働者は賃金の分以上の労働を強いられている。資本家に搾取されている!
これが、マルクスの言う余剰労働だ。
日本共産党がブラック企業撲滅に積極的なのも、なんとなくうなずけるね。
しかし、ここで問題が起こった。
世の中に余剰労働がありすぎたんだ。
例えば、資本家の孫正義さんが、北海道のとある農家のジャガイモを買い占めるとしよう。
その際、そのジャガイモにも、余剰労働のお金(余剰価値)が含まれている。
ジャガイモ農家もそれで儲けているのだから、作るのに1000万円かかったのなら、ジャガイモを例えば合計1200万円で売る。
そうすることで、資本家の孫さんもその余剰価値を払わざるを得なくなる。
そうなると、資本者が一方的に搾取するという構図は、少しおかしいことになる。
それについての詳しい情報や、トマ・ピケティのデータ、マルクスの労働価値説についても漫画には描いているよ。詳しくは買って読んでみてね
ただし過信は禁物
『キミのお金はどこへ消えたのか』はあくまで『人づて』
さて、ここまで書いてきたけれど、注意喚起しておくことがある。
それは、あくまで人づてだということ
この漫画の企画は、アル・シャードによる協力とあるけれど、このアル・シャードがなんなのか、調べてもよくわからない。
調べてみても、井上純一氏が書いたTRPGのタイトルとしか出てこない。
架空の組織だとは思っていないけれど、井上純一氏本人とかかわりのある組織の可能性は高い。
漫画の中では、このアル・シャード氏が経済のアマチュアだと言っている。
井上氏は、アル・シャードの講義を受けて、それをもとにこの漫画を描いている。
経済学者の飯田泰之氏による監修はされているから、完全な間違いというわけではないんだろうけれど、参考文献が欲しかったよ。
3.2.別の意見を読むことが求められる
もう一つ、これを読んで疑問に思うことがある。
井上純一氏は、自称経済のアマチュアであるアル・シャードの講義を受けて、大学教授の監修のもと、当漫画を発行した。
本には、経済の基本のキしか書いていないとあるけれど、そんな常識と外れている政策をなぜ日本はやっているのか
ということだ。
井上純一氏は漫画の中でこのように書いている
第二次大戦って今考えると無謀な戦いだったけどさぁ
当時の日本人は……
国のためになるって信じてやってたとおもうのよ……
頭のいい人まで含めて国全体が間違うことって……そんなに珍しいことじゃないかもしれない……
つまり、なぜ日本が、そうしないのかという疑問に「間違っていることに気付いていないから」と答えている。
その点はどうかと思うよ。そういった反対意見への反論もしてほしかったのが、率直な印象だよ。
纏めると、
『キミのお金はどこに消えるのか』は、経済の初歩を知るにはいい本だけれど、情報元などの面から、過信は禁物。
反対意見を書いている書籍も併せて読んだ方がいい
今回はここまでだよ。
ぜひ、読んでみてね(^●ω●^)