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佐藤優はどうやって外務省のラスプーチンとなったか- 佐藤優 『勉強法』

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僕が政治を考えるとき、必ず参考にしている人がいるよ。

一人は池上彰さん、そしてもう一人が、池上彰さんと共著も出している佐藤優さん。

元外務省官僚で、現在は日本維新の会議員である鈴木宗男氏の秘書をしたこともある。特にロシア関係に詳しく、北方領土問題をはじめとした世界情勢にも通暁。霞が関のラスプーチンといわれた人だ。

 

なぜこの人を参考にしているかというと、佐藤優さんが勉強家だからだ

佐藤優さんは、安倍政権にはかなり批判的なんだけど、同じく現政権に反対派の浜矩子氏や茂木健一郎氏と大きく違うところがある。それは、リベラルに対しても厳しいというところ。

今回紹介する勉強法 教養講座「情報分析とは何か」 (角川新書) という本にも、山本太郎氏が今上天皇(現在の上皇さま)に手紙を渡したことを田中正造が明治天皇へ直訴したことに例えた新聞を「田中正造を引き出してくるほどの大きなニュースではない。ニュースにすることがニュース」だとしているよ。

それについては後述しよう。

 

あるいは、池上彰氏との共著『新・リーダー論』の中で、山尾志桜里氏のガソリン代問題に言及している。

新・リーダー論

 

一般的に左派として知られる人は、自分と同じ左派・反政権派の人を擁護しがちだ。

しかし、佐藤優という人間はそれらとは異なる。

 

もちろん、佐藤優にもどうかと思う点があって、イデオロギーが強すぎて論理構成が無理やりなところもあるよ。特に2012年以前の著書ではその傾向が強く、共著・対談ではその傾向が弱く中道に近くなっている。

今回は、そんな佐藤優氏が2018年に出版した『勉強法』について、考えてみたよ。

 

佐藤優の『あり得ない知』

知と無知を整理する

 

まず、この著書は佐藤優氏が講演で言った内容を記録しているものなんだけど、その講演で佐藤氏はパワポそころかレジュメもなかった。それは、メモを取れる内容というのは、自分が理解できるものだけだから。

どこが理解できてどこが理解できていないかを見分けるのがメモの本質だと説いているよ。ICレコーダーで全部記録しちゃうと、それができないからおすすめしていないよ。こういった知っていることと知らないこととを分けることがインテリジェンスの中でとても重要だといっているよ。

歴史の知識が必要

佐藤優氏は、情報・ニュースの分析にあたって『場合分け』を行う。

 

例えば、サリンがシリアで使われたと事件で、その背景として3つ挙げている。

一つは、アサド大統領の命令で政府軍がサリンを使用したというシナリオ。二つ目が、アサドは命令していないが政府軍がサリンを使用したというシナリオ。最後が、反政府軍が使ったというシナリオ。

で、こういう場合分けに常用となってい来るのが歴史の基礎知識であって、日本の報道はその点が弱いといっている。

 

大切なのが基礎知識です。中東の情勢を見る場合に、欠かせないのは岩波の『岩波イスラーム辞典』。これを持たずして中東情勢について語るのは、相当に乱暴な話ですが、現実には乱暴なことが起きています。 -佐藤優 勉強法

 

その辞典を読むと、シリアにはアラウィー派という同朋意識の強いグループがいて、アラウィー派以外を国民と思っていない。だから簡単に同じシリア国民を殺すことができる。そういう理屈が容易に推測できる。

世界史として全般的に見るだけでなく、各国の歴史や宗教の基礎的なところを知らないと、変な言説に惑わされかねない、ということだね。

 

インテリはいかにして作られるか

ウィキペディアからその国の知的レベルがわかる

佐藤優氏は、ウィキペディアが国の文化・知的レベルを表しているといっているよ。

例えばロシアやドイツのウィキペディアはレベルが高い。それは、知識人と大衆とが分かれていて、大衆は政治や学問的なことを書き込むことをしないからだそう。

考えてみてください。ネットの掲示板に書き込んでも大丈夫だと思うのは、大きな間違いです。つながっているのですから、追跡していくことも可能です。ロシアなら、痕跡を消すようなソフトを使っても、それをたどっていきます。同時に関係者のところで聞き込みを行い、それほど時間をかけないで誰が書き込んだかを確定するでしょう。匿名で書いても、それは記名と同じである、という意識が働いている。その文化の集積がロシアのウィキペディアのレベルを高めているわけです。 -佐藤優 勉強法

 

日本のウィキペディアは鵜呑みにできないよね。佐藤優さん自身、自分は東京都生まれにも関わらず埼玉県生まれと長い間書かれていたそうだ。

人物だけでなく、学術的なところにもイデオロギーを入れかねないのが日本のウィキペディア。

 

今年2月、安倍晋三総理がエンゲル係数の上昇について国会で野党に問われたとき、「食生活のスタイルの変化がエンゲル係数上昇を招いた」と答えた。

エンゲル係数は低いほどいいのが一般的なんだけど、安倍総理はその原則から外れたことを言った。

その翌日、ウィキペディアのエンゲル係数の項目が書き換えられ、「エンゲル係数はたいして重要な指標ではない」という内容の文章に改稿された。

「エンゲル係数」ウィキペディア書き換え合戦 首相答弁直後に…官邸の陰謀説まで

 

こういうことが起こっているとうことは、日本人の知的レベルはあまり高くないということになるね。

もしロシアやドイツで2ちゃんねるができたとしても、学術的なスレに知識の浅い人が知ったかぶりをしたり、政治のスレにイデオロギーが入ることは起こりにくいんじゃないかな。そう思ってしまうよ。

 

 

大人になってからの勉強法

高校の全科目を学習しよう

 

ゆとり教育についてはいろんな弊害がうたわれているけれど、佐藤優さんが挙げているのが、科目がアラカルトになっているということだよ。

中等教育とは中学校ではなく、高校までが中等教育というのが国際基準になっています。高校とは高等中学校の略です、ですからわれわれが目標とするときは、高校のカリキュラムを基本的に全部消化することです。 -佐藤優 勉強法

 

中学までは、理系でも地歴、文系でも理科を学ばされたけれど、高校では文理で学ぶ科目が変わってくるね。理系の僕は倫理や世界史Bをやっていないし、文系の人は物理や化学をやっていない、少なくともⅡまでしている人は極めて少数じゃないかな。それどころか、理系でも理科四科目学んでいる人はほぼいないだろうし、文系でも日本史と世界史と地理をマスターしている人は少ないと思う。

それは国際基準としては高くない。文系理系にかかわらず、高校で習う科目は全科目すべきというのが佐藤優の持論だよ。

数学は放送大学を利用する

理系の僕にとっては数字は言語の仲間だよ。論理を伝えるにあたっては言語と同じような役割をするからね。この感覚を共有してくれる理系の人は少なくないと思うよ。

でも、どうも文系の人の中には、中学校の数学で躓いているひともいるみたい。ぼくも塾講師をしていたことがあるからわかるけれど、うまく物事を抽象化できるかどうか、そして先生がそのサポートをうまくできるかどうかがキーだね。

佐藤優さんは、小学校の算数をクリアした前提で、中学の数学で躓いた人には放送大学を勧めているよ。放送大学の教材は340円。数の概念から始まり、中学レベルの数学をしていると思ったらわずか15回の講義で大学工学部1年秋レベルの内容にいっている。おまけに、放送大学に入学しなくても無料で聞けるそう。

応用問題はないかもしれないけど、理系の大学初歩レベルまでの数学を最小限の時間で習うのは素晴らしいカリキュラムだね。

英語は時間がかかる

高校の英語の教科書は、大学入試にはあまり必要なモノではないと思うよ。

それはなぜか。

語彙が圧倒的に少ないからだよ。

現在、高校生が覚えなければいけない英単語数は3000語。ただしこれは高校卒業のために覚えなきゃいけない単語数だけれど、例えばセンター試験だと3760語を覚えれば読めると分析されている(衝撃!センター試験に必要な英単語の数 より)

でも、この量では全く使えない。

英語がデキる人の「語彙数の平均」はどのくらいなのか? によれば、ネイティブスピーカーの語彙数は高校生で2万語。非ネイティブで英語ができるのは1万語。toeflで高得点をとるのにも1万語ていどが必要だから、国際現場で活躍するには最低でも高校生で覚えた単語数の3倍は必要ということだね。

ただし、勉強時間にも注意しなければならない。

英語は覚えきゃいけないことが多い。語源で覚えるにしても限界があるし、そもそも語源自体がいくつもある。

3000しか語彙数がない人が1万おぼえるようとすれば、1年では無理だろうね。どのくらい時間がかかるか、それを逆算しないといけない、ということを佐藤優氏は言っているよ。

 

今回はここまでだよ。しっかりと勉強して、教養ある日本人を目指そう(^●ω●^)


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